レーザーカッターのこと

昨年から職場のレーザーカッターの調子が良くない。そこで物は試しにシンガポールのMaker Spaceまでアクリルを切りにいった。もじげんの先端部分のアクリル板(5mm厚・8本分)を切り出すのに、1時間・100Sドルくらいかかった。

この価格だと、決して気軽に使えない。もっとリーズナブルな解決法はないかと探したら、職場からバスで20分くらいのところにレーザーカット専門の工房があるとわかった。メールで見積もりをお願いすると、アクリル代込みで40Sドルとのこと。対応も親切だった。

なので、以後はその工房にアクリルを切ってもらっている。端面の綺麗さは自分でオペレーションするときほど良くないけど、概ね満足できるレベルだ。アクリルも画材屋で売っているものより良い。

そんなおり、たまたま「ファブラボ天神を1年やってみた」というスライドを目にした。運営者の率直な意見が面白かった。

FabLabもMakerSpaceも、半端なサービスを市価より高く提供しては、利用者も運営者もハッピーになれない。2倍の値段でアクリルをカットするより、同じ予算で2回作りたいのがMakerだ。どうせ1回目は失敗するんだし。まともなレーザーカッターが20万円台で買えるようになった今、DMM.makeのようなブロックバスター以外は、使い出が悪そうだ。パソコンが安くなるにつれパソコン専門店が減ったように、道具が安くなったらFabLabやMakerSpaceも減っていくんだろうな。

※2017年10月13日追記:ArtScience Museum内にあるFabCafe Singaporeが、アクリル工房よりも安くカットしてくれると判明した。スタッフがフレンドリーで、作業をしに行っただけなのに、ちょっと楽しい気分になれた。

一撃

好きなものは繋がっている。「へうげもの」がきっかけで陶芸が好きになり、茶碗を見に出光美術館へ行ったら仙厓の絵が好きになり、仙厓の絵を見に府中美術館へ行ったのが、4年前の今日だ。

今週、久々に仙厓を主人公にした歴史小説を読み返したら、「一撃忘所知」という禅話が胸に刺さった。音の一撃によって長年の迷いが開けたというエピソードで、詳しくはこのページの通り。

禅の指南は、悩む→悟るを繰り返して、人間を成長させる。閃きは一瞬。自分たちの仕事にも通じるような気がして、面白く感じられた。

最後に、ここ数ヶ月の間に自分が一撃を感じた作品をリストしておきます。

人生ゲーム

子供の頃は、凄い人や、偉い人と同じ視点に立てたらいいな、と思う事が多かった。努めてそうしていた気もする。まるで山を登るような気分だった。山頂を目指すこと、多くの山に登ることが素晴らしいと思っていた。山にいるだけで、なんか楽しかった。そして同じ山を登らない人が、いまいち理解できなかった。

 大人になるにつれ、人間関係が広がってくると、同じ山を登らない人とも一緒に何かすることが増えてきた。趣味に合わない映画を見ると疲れるように、感性や価値観の違う人と一緒にいると、それだけで疲弊するものだ。まず上手くいかない。ただ失敗をいくつか重ねると、疲れにも慣れるし、付き合いの塩梅もわかってくる。

すると、同じ山を登っていると思ってきた人たちとの間にも、明確な違いがあることに気づくようになった。つまるところ、自分と同じ山を登ってる人は、自分だけなのだ。この発見は、孤独や孤高というほどロマンチックじゃなかった。うすうす気づいてたけど、やっぱりそうだったのか。そんな、納得に近かった。むしろ今の人生は、山というより海なのかもしれない。浅い深いはあるけれど、高い低いはないからだ。

たぶん人生には、山ステージもあれば、海ステージもあるのだ。砂漠面もあれば、闇世界だってあるのだろう。それはまるでゲームのように。