ひとくちに研究職といっても、4つくらいの職分がある

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久々に西堀栄三郎の「忍術でもええで」を読んだら、(自然)科学的なアプローチばかりが研究じゃないんだぞ、と大いに励まされる表に再会したので、改めてエクセルで書き写した*1。各項目の詳細については、ぜひ原著を読んでもらいたい。約40年前の本とはいえ、今なお通用するであろう新製品開発の名著です。

ひとくちに研究職*2といっても、4つくらいの職分がある。そこに気づかなかったり、混同したりすると、悲劇は簡単に起こる。それぞれの職分は等しく尊くて、得意な仕事に専念できたら、それは何より素晴らしい。最近の自分は、上の表でいう応用研究に専念できていて、大変嬉しい。有難い機会を頂いてるなと思います。

*1:というのも、10年くらい前にも一度、パソコンで書写したから。

*2:研究所の所員と言った方が適切か?

問題がなくても問題ない

僕は電子遊具(ガジェット)を作っている。なので、見て、触って、面白い!と感じられるものが作りたい。ジャンルとしてはエンターテイメントで、テレビ番組やアニメ、漫画やゲームなんかと近いものを作ってる認識だ。
 
新しいガジェットを作るときは、これまでにない面白さを発見して提案する必要があるし、技術的な課題を解決する必要もある。そういう意味で、ガジェットの新規開発はアート的でもあるし、デザイン的でもある。
 

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アートとデザインの違いはわかりやすい。クリシェだけど、アートは問題を提起し、デザインは問題を解決するものだ。ただ、ここにエンターテイメントを加えると、こじれてくる。なぜなら、エンターテイメントは問題をもたないからだ。
 

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そうしたエンターテイメントの「問題のなさ」に、引け目を感じるときもあった。大人が取り組むには、真剣味に欠けるのかなぁと思うこともあった。だけど、問題がないからこそ、たまの休みを安らかに過ごせるのだし、娯楽で仕事の憂さが晴らせるのだ。
 
エンターテイメントは問題がなくても問題ない。ノープロブレムだ。むしろ、遊びがあるかないか、それが問題だ。

レクサスは、まぁあかん

10月の初旬に、ちょっとしたガジェットのアイデアが思いついた。たまたまレクサスのデザインコンペ「Lexus Design Award 2017」の締切が1週間後だったので、ハッカソン的な勢いでプロトタイプを作って、応募することにした。審査員に伊東豊雄氏がいること(お会いしてみたい!)、100万円の制作費をもらってミラノサローネに出展できるのが、コンペの魅力だった。
 応募資料には、文章と静止画が必須で、任意で映像を添えることができた。その際は、YouTubeないしVimeoにアップロードし、URLを投稿フォームに記載することになっていた。僕は、人が使うもの・動くものを作っているから、映像での説明が欠かせないと思っている。例えばキャタピーのようなものの挙動を、明確に伝える手段は映像しかない。というわけで、いつものように一人で映像を撮って、YouTubeに限定公開でアップして、投稿資料に加えた。
 
それから3ヶ月ほどたって、結果が公表された。僕の案は、あえなく落選した。残念だけど、当落は審査員が決めるもの、コンペとはそういうものだし、異論はない。その一方で、興味深いことがわかった。YouTubeの投稿者は、自分の動画がいつ・どこで・どのように再生されたかを解析することができる。そのおかげで、僕の映像資料は一度も再生されずに落選したと判明した。
 
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上の画像は該当映像のアクセス解析グラフだ。実際には2回だけ再生されている。1回は、アップロード日に自分がシンガポールから。もう1回は審査後の2017年1月に友人が東京から。ファイナリスト審査会は2016年11月18日とアナウンスされている。仮に審査員が映像をチェックしたのであれば、10月から11月にかけてなんらかのアクセス履歴があるはずだ。
 
すると、いろいろな疑問が湧いてくる。YouTubeにはアクセス履歴が残らないように動画を視聴する方法があるのだろうか?審査員は映像を判断材料にしなかったのだろうか?審査員による最終選考の前に、誰かが足切りや露払いをしたのだろうか?だとすれば、誰が、どういう評価基準で?
 
それらを詮索する気も、僕にはない。ただ、なんだかなぁという不満と、Lexus Design Awardって資料を精査してくれないんだなぁという虚しさは残った。年末の特番で、マツコ・デラックスに嬉々として工場を案内する豊田章夫社長を見て、トヨタってくだけた会社だなぁと思ったんだけど、そうした気持ちも砕けてしまった。
 
レクサスはまぁあかんな。おまんたはミラノに行っとらんで、イタリアンでも食べとりゃぁええわ。来年はちゃんとまわしとかなかんぞ!