原点へ

今年は努力が空回りすることが多く、なんだか歯がゆい一年だった。その一方で、人の縁には恵まれていた。とりわけ首都大の馬場さん、札幌市大の藤木さんにお会いできたのは嬉しかった。

自分が学生の頃に影響を受けたのは、研究室の先輩だった植木さんと徳久さんの後ろ姿、田所さんや久世さん、堀尾さんといった先駆者がアップロードしていたWEB教材、メディア芸術祭で見たクワクボリョウタさんのデジタルガジェット6,8,9、そして当時の九州芸工大で活躍されていた藤木さんと馬場さんの作品だった。

馬場さんのフレクトリックドラムスは、単に楽器やガジェットとして洗練されているだけでなく、座の遊び、和を作るメディアとして、強烈な衝撃を受けた。

藤木さんは、ゲーム的な表現方法を利用しつつ、超主観的な世界を構築しようとするアティチュードがかっこいいし、なにより作り込まれてて遊んで楽しい。

藤木さんも馬場さんも自前で技術と表現を作っている。だからか、ひとまとまりの経験としてのデザインが優れている。「文章做到極処、無有他奇。只是恰好」という洪自誠の言葉があるけど、まさにそれが当てはまる。そこが同時代に登場した技術デモ的な作品とは一線を画して美しかった。しかも作品が商品というかたちで世にも出ている。だからこそ、僕は彼らに憧れる。

そんな尊敬する馬場さんと藤木さんに、今年は夏と冬のSIGGRAPHで会うことができた。短い時間だったけど、考えていることを交換することができて、感動したし元気がでた。

アキレスと亀かもしれないけれど、やっぱり懲りずに自分で考え、手を動かしてきて良かったと思う。道はいよいよ狭い。同年代の友人たち、とくに日本人を含むアジア人は、歳を経るごとに後衛に回って寂しくもある。それでも前線に立つことで生まれる縁があるから、人生は喜ばしい。

今年も仕事納めまで残り2週間。やれることをやり尽くして、来年も作って楽しもう。

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バゲットの進捗

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今年の春から、週末になるたびバゲットを焼いている。藤森二郎さんのレシピ本を参考にアレンジを加えたら、だいぶ安定して好みのバゲットを焼けるようになった。最近は、次の分量・次の工程でバゲットを焼いている。

分量(3本分)

  • 小麦粉 375g
  • 水 230g
  • 塩 7g
  • 砂糖 6g
  • イースト 3g

工程

  1. 水以外の材料をボウルにいれて、よくヘラで混ぜる。
  2. 少しずつ水を入れながら、ニーダー付きのハンドミキサーで混ぜ合わせる。
  3. 生地に水が染みこんだら、手で捏ねて、ひとまとまりの生地にする。
  4. 生地がボソボソしていたら、再度ニーダー付きのミキサーで捏ねる。
  5. 生地が均質になって、肌理が整ってきたら、丸めてボウルにいれ、ラップして冷蔵庫に入れ、一晩放置。ここまで、寝る前にやっておく。
  6. 翌朝、生地を3等分する。およそ600gの生地ができてるので、200gずつスキッパーで分ける。
  7. 分割した生地を、枕型に整形して20分のベンチタイム。
  8. 休ませた生地を、細長の円筒状に整形して60分の二次発酵。この段階で、余った打ち粉を化粧粉としてふりかけてしまう。下の写真は、二次発酵後にクープを入れた段階のもの。
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  9. 二次発酵が45-50分終わった段階で、オーブンの予熱を始める。焼き上がりまで250度をキープ。我が家のガスオーブンにはスチームがないので、下段に熱湯を張ったバットを置いている。鉄板もあらかじめ入れておく。
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  10. 二次発酵が終わったら、カミソリでクープを入れ、鉄板にのせて焼き始める。カミソリは、ダイソーなんかで売っている薄刃の両刃カミソリがいい。
  11. 250度のまま25分焼く。我が家のオーブンは、熱源が下にあり、上面が焼けにくい。なので焼き始めから12分で、パン生地を軍手でつかみ、天地を返している。
  12. 焼き上がり。上の写真のような状態になる。ここまで起床から2時間弱。うまい。

なにはともあれ、まずは藤森さんの本を読んだほうがいいと思う。Amazon プライム会員ならただで読める。おすすめだ。

ちなみに本書によれば、僕が作っているバゲットは太短いのでバタールだ。長細いフランスパンをバゲットと呼ぶらしい。

橋と箸

びっくりした。

余暇を使って東京ミッドタウンアワード2017のデザイン部門に応募していたのだが、今回の入賞作と、自分たちの提出案が、かなり接近していたのだ。

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テーマは東京だった。あいにく自分は東京に住んだことがない。東京へ行くためには、幾つも橋を越えなければならなかった。そして着いた先にも、日本橋万世橋といった具合に、必ず橋があった。東京は橋の町だ。そんな記憶が元にあって、橋を箸置きにするアイデアが生まれた。箸置きは道具であって玩具のような愛嬌があるから、自分に適した題材だと思った。

これを妻に話すと、ことのほか面白がってくれた。そこで2人でプレゼンシートを作ることにした。6月から7月にかけて、週末になるたび東京の橋梁をリサーチしたり、3Dプリンタを使って強度あるデフォルメを検討したりして過ごした。一緒に何かをつくるのは結婚式の招待状以来で、最初はギクシャクしていたけれど、お互いのリズムがつかめるようになると、作業にもグルーヴ感がでてきた。

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材質と工法を決めるにあたっては、陶器に絵付けをする、真鍮をロウ付けしてトラスを組む、という案もあった。最終的に木の積層を選んだのは、個性豊かな橋の構造を、線と面の両方を使って、強く美しく立体化できると考えたからだ。目指したのは、暮らせる模型。これなら箸や箸置きを使わない文化圏の人でも、旅の思い出に1つ買って帰れるだろうと考えた。

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そして7月の中旬に、上記のレンダリングをもとに、プレゼンシートを作成してシンガポールから郵送した。結果を楽しみにしていたが、僕らに朗報は届かなかった。まぁ、そんなこともあるよね。今度は他の町の橋でも作ってみたいね、なんて話をしていた。それからしばらくたった10月13日の金曜日。インターネットで結果を見て、思わず2人で仰天してしまった。

こんなことってあるのか・・・。その週末は、取るものも手につかなかった。それでも、新しいことにチャレンジできたし(Keyshotが使えるようになった)、クリエイティブな課題に夫婦で取り組めたのは楽しかった。至らない部分を省みつつ、今後もデザインの研鑽に励もうと思う。