へうげもの8服を読んで

木曜に購入し,金曜本日シンポジウムまでの車中で読んだ.利休と秀吉の決別を主軸に話は進むが,中盤で魅せる伊達政宗古田織部の一芝居こそ読みどころであろう.伊達の「かっこよさ」と,織部の「おもしろさ」が京・三条通で対峙するなかで,言葉にならない爆発的な「凄み」が生まれるその情景は,暗澹たる8服において唯一描かれる清涼剤である.

ここに描かれる伊達は「こういうのがかっこいいと思うんだろ?」というおごりがない.織部もまた「この俺を笑ってくれよ」という嘲りがない.自身の格好良さを芯から信じる伊達,自分が笑いたいがゆえに策を打つ織部.この素直で,かといって素朴ではない「かっこよさ」と「おもしろさ」を身に抱くこと,漠然と心中にあった僕が目指したい境地が8服を通じて明確になった.