五島美術館

土曜日に上野毛五島美術館へ行ってきた。五島美術館には東急創業者の蒐集した茶器名物が収蔵されているらしく、先に読んだ「茶道の歴史」で存在を知って以来、行きたくてしかたなかった。で、いざ見てみると、利休や織部が選んだ一品には品があることに気づく。寂びすぎず、侘びすぎず、歪みすぎず、ひょうげすぎず。過ぎたるは及ばざるがごとしの一線が自覚されているから、作意に厭味がない。大自然はキチっとしてるようでキチっとしてないし、キチっとしてないようでキチっとしてたりもする。そんな自然の不自然、不自然の自然が作り出す美が、彼らの陶器に反映されているようにも思えた。陶器の他にも横山大観の掛け軸には心が動いた。僕は岐阜の育ちだから、どうも山麓の風景に情動が刺激されるみたいだ。

美術館を出て、しばし庭園を散策した。高低差があり、まるで山の中にいるような気分だった。じきにお茶会が開かれるらしく、着物をきた女性たちを多く目にした。深い緑の景色のなかで、着物は花のように見える。時代劇や市中で見る和服はコスプレにも似て滑稽だけれど、こうして日本の原風景のなかでは堪らなく美しい。

五島美術館

庭園をぬける細道で、老夫婦とすれ違った。普段なら「すみません」と言って道を譲りあうところだけど、そこでかけられた言葉は「おはようございます」だった。ああ、そのほうが自然ですがすがしいよな。

その後、電車に乗って日吉で会議。それから桜木町でフランスから着た蜘蛛を見にいった。蜘蛛は、うーん、いまいちだな。高層ビル建築現場の重機を見てたほうがいいや。