橋と箸

びっくりした。

余暇を使って東京ミッドタウンアワード2017のデザイン部門に応募していたのだが、今回の入賞作と、自分たちの提出案が、かなり接近していたのだ。

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テーマは東京だった。あいにく自分は東京に住んだことがない。東京へ行くためには、幾つも橋を越えなければならなかった。そして着いた先にも、日本橋万世橋といった具合に、必ず橋があった。東京は橋の町だ。そんな記憶が元にあって、橋を箸置きにするアイデアが生まれた。箸置きは道具であって玩具のような愛嬌があるから、自分に適した題材だと思った。

これを妻に話すと、ことのほか面白がってくれた。そこで2人でプレゼンシートを作ることにした。6月から7月にかけて、週末になるたび東京の橋梁をリサーチしたり、3Dプリンタを使って強度あるデフォルメを検討したりして過ごした。一緒に何かをつくるのは結婚式の招待状以来で、最初はギクシャクしていたけれど、お互いのリズムがつかめるようになると、作業にもグルーヴ感がでてきた。

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材質と工法を決めるにあたっては、陶器に絵付けをする、真鍮をロウ付けしてトラスを組む、という案もあった。最終的に木の積層を選んだのは、個性豊かな橋の構造を、線と面の両方を使って、強く美しく立体化できると考えたからだ。目指したのは、暮らせる模型。これなら箸や箸置きを使わない文化圏の人でも、旅の思い出に1つ買って帰れるだろうと考えた。

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そして7月の中旬に、上記のレンダリングをもとに、プレゼンシートを作成してシンガポールから郵送した。結果を楽しみにしていたが、僕らに朗報は届かなかった。まぁ、そんなこともあるよね。今度は他の町の橋でも作ってみたいね、なんて話をしていた。それからしばらくたった10月13日の金曜日。インターネットで結果を見て、思わず2人で仰天してしまった。

こんなことってあるのか・・・。その週末は、取るものも手につかなかった。それでも、新しいことにチャレンジできたし(Keyshotが使えるようになった)、クリエイティブな課題に夫婦で取り組めたのは楽しかった。至らない部分を省みつつ、今後もデザインの研鑽に励もうと思う。