ベストの尽くし方

「和食は材料が9割」なんてことを魯山人は言っているバゲットを焼くようになって、その言葉の意味がわかるようになった気がする(和食じゃないけど)。

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パンの味は小麦粉の特徴そのものだ。香りのいいもの、噛むと味がするもの、よく膨らむもの。見た目は同じ粉なのに、その個性は千差万別だ。品種の違いは産地の違いでもある。パンやピザを焼くときは、日本産より欧米産のほうがずっと美味しい。もちろん普段使いだから価格や栄養価も無視できない。現時点で我が家ではBob's Red MillのArtisanが攻守最強と決まった。

一方で、これは和食とは言えないけど、お好み焼きはどんな小麦を使っても美味しい。いつも特売のミックス粉を買うので、メーカーが毎回違うんだけど、不満に思ったことがない。化学調味料で安定化されてるからだろうけど、やっぱりお好み焼きはソースが命だ。自分はオタフクがお好みだ。

小麦を使うと言えば、唐揚げのような料理もある。唐揚げも新鮮な若鶏で作ったほうが美味いに決まってる。だけどシンガポールにいると、臭いの強い、ちょっとやばそうな鶏肉に出会うことがある。そんな鶏肉でも、唐揚げにすれば美味しく食べられるから嬉しい。色白と揚げものは百難隠す。

同じ揚げ物だと、最近は「がんもどき」に感動している。雁なんか食べたことないし、まったく肉の味はしないのに、うまいんだなぁ。揚げたてもいいし、煮てもうまい。中途半端に肉の入った豆腐ハンバーグよりずっと美味い。古のベジタリアンの執念には恐れ入る。

つまるところ、魯山人が本当に言いたかったのは、 材料vs料理の比重論ではなく、ゲストのためにベストを尽くせということだと思う。そもそも、ご馳走の語源は「美味しいものを求めて走り馳せる」なんだから、魯山人に言われずもがなだ。無い袖は振れないし、手にした札でやるしかない。Anything Goesだ。

そんなわけで、魯山人=性格最悪な短小野郎という説も、なんとなく理解できるようにもなりました。