監督,ばんざい

久々にたけし映画を見た.お笑いのスターとなり,映画界の巨匠となった北野武でも,まだまだ悩みに満ちて生きていることに気づいた.たけしが自分の映画を壊そうとするのは,これで二度目だ.一度目は「みんな〜やってるか」で映画をお笑い手法で壊そうとしたがうまくいかず,結局のところバイク事故で自分が壊れてしまった.本作「監督,ばんざい」も表面的には「みんな〜」と同じ手法をとっているが,より直喩的で内省的だ.現在の映画と観客の状況を風刺しながらも,そんな状況を自身の映画(しかもギャング映画以外)で打破できない苛立ち,葛藤,悔しさを,北野武はさらけだし,ついにはすべてを破壊する.デリダ脱構築は虚無を残したが,武は隕石によってすべてのシーケンスを破壊したのち,古き良きハリウッド映画のように,光り輝く文字で「監督,ばんざい」を掲げる.その文字は陳腐なものだが,きっと何かしらの手がかりをつかんだのだと思う.映画は,撮ることでしか生まれない.良い時も,悪い時も.とにかく撮って,隠さずに出す.これは僕らの人生にも言えること.良い時も,悪い時も,真剣に悩み,苦しみ,それでいて前に進もうとすることで感動が,創造が生まれる.映画そのものは酷かったけど(笑),自分の背中を押してくれるような,まさに天才たけしの元気のでる映画でした.

あと内田有紀はガチ美人.