「頂き女子」の対として「ギバーおぢ」という言葉を知った時、すぐさま頭に浮かんだのが「濁音時代」だ。濁音時代とは、佐藤雅彦先生が考案した、強いキャッチコピーのルールである。佐藤雅彦全仕事には、こう書かれている。
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こうして佐藤先生は濁音の語感の強さを発見し、ジャンジャカジャーン(JR東日本)、バザールでござーる(NEC)といったコピーを作って、ヒットCMを量産していった。
佐藤先生の授業を受けていた自分達は、その当時から、このルールの不完全さを感じていた。濁音の強さは半ば自明に感じられる一方で、良い濁音と悪い濁音の判別については不問だったからだ。佐藤先生にしか使えないルールにも感じられた。自分達には使いこなせない不満を、「はだしのゲンも濁音時代」「ギギギも濁音時代」といった軽口で吐き出していたのを思い出す。
今、改めて考え直すと、「濁音時代」とは「映像を導く強い言葉」のことなのかもしれない。その言葉が起点になって、キービジュアルや、ストーリーボードが自然に描けてしまうような言葉。だとすれば、やはり「ギバーおぢ」は「濁音時代」だ。