丸山健二「イヌワシに挑んで」より

NUSの中国語図書館には日本語の本がガッツりある。そこで借りた随筆集の一節から。

イヌワシを見るまでもなく、カラスが飛んでいるところを見たって、あんな調子に大気中を滑って行くことができたら、さぞかしいい気分ではないかと誰でも考える。考えに考えて、更に考えて人間はおよそ五十年前にようやくそれを実現させた。けれども初めからマシーンであり、プロペラの次には尻から火を吹くようになって、鳥のイメージからは掛け離れたものになってしまった。夢多き男達が求めるのは決して機械ではなく、簡単な道具にすぎないのだ。音はといえば、せいぜい風を切る音くらいなもので、しかもゆっくりとだ。