水筒があれば自販機はいらない (キャプテンスタッグ HDボトル1000)

シンガポールと比べて、日本は物にあふれている。日本で物を買うのは、河原でお気に入りの石を見つけるようなもので、楽しいというより、難しいものだ。みな大なり小なり、物を選ぶことにストレスを感じているに違いない。だからこそ、一人がみつけた正解や失敗は、仲間と共有したほうがいい。そういうわけで、これからしばらく、購買の記録を書いていきたい。

春から埼玉の大学で働いている。大学の教員は、実に喉の乾く仕事だ。授業が終わると、ついつい缶コーヒーを買いたくなってしまう。それが不経済に思えて、先月から水筒を職場に持参するようになった。最初は500ccのアルミ水筒を使っていたが、結露がでるうえ保冷もできず、容量はまったく足りなかった。

解決策を求めて、東急ハンズへ行った。どうやら容量の大きい水筒は、コップに注いで飲むものしかないようだ。それではだめだ。授業の最中こそ、喉は渇くのだから。いつなんどきでも、ボトルに口をつけて、グビグビとやりたい。

こうして見つけたのが、キャプテンスタッグの水筒だった。容量は1リットル。ステンレスの中空ボトルだから、結露はできないし、しっかり保冷もできる。出勤時にいれた水が、退勤時まで冷たいくらいだ。つまり一日分の水を運ぶことができる。

容量が大きいぶん、体積は小さくない。長さが30cm、直径は8cm以上ある。だからバックパックのサイドポケットに入れるのは難しい。それでも気密性が高く、液漏れの心配はないから、他の荷物と一緒にメインの荷室に入れてしまえばいい。自分は、キャップの取っ手を指にぶら下げて運ぶこともある。

構造が単純な分、洗うのも楽だ。ボトルの口を軽く洗い、中は水ですすぐだけで済む。毎日使うものだから、手間のいらなさは特に嬉しい。

単純で優秀なものは、応用が効く。容量があって、保温にも優れているから、米と米麹で甘酒を作ることもできる。口が広いから、スロークッカーとしても利用できるだろう。

この水筒を使って、一ヶ月が過ぎた。今の所、満足しか無い。希望小売価格は6,000円だが、通販サイトだと2,000円前後で売っている。中に入れる水だって、スーパーの浄水器で汲めば美味しくてタダだ。ペットボトルの水を買うと思えば、もう十分元は取れた気がする。

途上国の犬になる

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先週末に、念願の「ウェルビー」に行った。ウェルビーとは、名古屋に3店舗を構える男性サウナの専門店。タナカカツキさんのサ道を読んで以来、ずっと行きたいと思っていたのだ。

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漫画で絶賛されたのはウェルビー栄店の「森のサウナ」だが、今回は台湾ラーメンの発祥である中華料理「味仙」にも行きたかったので、ウェルビー今池店を選んだ。

ウェルビーは噂にたがわず良いサウナだった。まず水風呂がキンキンに冷たい。水温が15度を切っていて、火照った肌が一気に引き締まる。次に、サウナのバリエーションが豊富。今池店の場合、大部屋のドライサウナの他に、滝のミストサウナがあり、さらに日本の古式サウナ(からふろ)が2つある。だから繰り返し入って楽しめる。そしてロウリュ(焼け石に水を注いで室温をあげる)、アウフグース(タオルをはたいて熱波を客にを送る)、ヴィヒタ(白樺の枝の束)といった、サ道に出てくるアレコレが体験できる。おかげで週に4度はスポーツジムのサウナに入ってる自分も存分に満喫できた。

でも、それ以上に感銘を受けたのは、利用者の寛ぎ方だ。サウナ二階の大広間では、真昼間からおじさんたちが、誰にはばかることなくゴロゴロしていた。テレビをみたり、漫画を読んだり、うたた寝したり。各々が思い思いに脱力していた。その光景は、どこか途上国の犬たちのように思えた。

上の写真は、夏に訪れたスリランカのポロンナルワで撮ったものだ。スリランカは、とりわけ犬の多い国だった。飼い犬なのか野良犬なのかわからないけども、どこへ行っても犬がいて、いつも地べたに寝転がっていた。うだるような暑さで参ってるだけかもしれないが、平和な犬の寝姿を見ていると、こっちまで心が緩んでくる。

今日のところは、思い切りのんびりするか〜。

気づけば自分も犬になって、畳の上で微睡んでいた。

海外で働くということ

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シンガポールから帰ってきて暫くの間は「やっぱり日本の方がいいでしょ」と言われることが多かった。確かに日本は良いところで、物価も安いし、物流も発達しているし、自然も伝統文化もある。物作りに対する社会の理解もある。だけどシンガポールだって負けてない。気候が温和で、食文化に多様性がある。自家用車がいらないくらい公共交通機関が発達しているし、政府も金融機関もネットでサービスしてくれる。外国人向けの住居には、プールもスポーツジムもある。休暇もとりやすい。労働者として生活するなら、日本より格段に過ごしやすいと思う。

じゃあ日本の良さってなんだろう。究極のところ、国民でいられることだと思う。自分はシンガポールに、労働ビザ(EP)で滞在していた。EPは兼業を許さないから、例えば個人で作った玩具をMaker Faireで販売するような些細なことでも、堂々とやれば滞在資格を失う可能性があった。大学での研究を実用化しようとしても、資産をもたない外国人研究者がシンガポールでスタートアップを起こすのは、資金面で現実的ではなかった。公的な研究費も大学に直接雇用される教員でないと出願できなかったり、芸術の助成金も外国人には開かれていなかったり。作家として、研究者として、自立と飛躍を目指そうとすれば、必ず困難に直面した。妻も配偶者ビザ(DP)で滞在していたので、仕事面で制約を受けることになった。一方、日本ならそうした不自由がない。なぜなら自分は日本国民だからだ。家族のためのビザも必要ない。たとえ無職だとしても国を追われたりしない。さらには参政権まである。

別にシンガポールが厳格なわけでも、日本が寛大なわけでもない。どちらの国も、国民には相応の権利がある、というだけの話だ。国民は国を道具にできるけど、外国人は国の道具として扱われてしまう。よって海外で働くということは、外国人としての不自由を甘受しつつ、母国では得られないもの、得られなかったものを獲得していくことに他ならない。だからこそ海外を経験すべきだろう、さらに世界が小さくなる前に。