MATさいでりあ

先週末にMedia Ambition Tokyo 2018が閉幕した。作品を見てくれた皆様への御礼と、展示に携わった方々への謝意と、無事に終わったことへの安堵で、胸がいっぱいだ。

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PHOTOGRAPH BY KOKI NAGAHAMA/2018 GETTY IMAGES

今回の展示は、自分にとっては青天の霹靂で、昨年末にいきなり決まった。そもそも六本木ヒルズにはORFくらいでしか行ったことがなく、Media Ambition Tokyoは自分がシンガポールに渡ってから始まったこともあり、どういうイベントか見当もつかなかった。いろいろ考えた上で、2017年に作った2作品を置かせてもらうことにした。

自分の作品は、東京シティービューの東側、展望台でも細まった順路に置かれることになった。それが、旅館の渡り廊下に工芸品が飾られているみたいで、ちょっと面白かった。ガジェットの実装先は、公共空間よりも私生活にあるから、自分にはふさわしい場所だと思えた。そしてなにより、朝日を仰ぐ場所だったのが良かった。

自分はよく日の出的・日の入り的という観点で表現や技術を捉えている。日の出的というのは、始まりの終わりであり、不安と同じだけ希望を抱えているものだ。日の入り的というのは、終わりの始まりであり、安堵とともに高揚を覚えるものだ。甲乙をつけるものではないが、いつだってAmbitionは曙光とともにある。

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設営最終日・2月8日の朝焼けと、朝日を見つめるCD Prayer。展示初日は、ユニコーンの「服部」がプレイされていた。

それにしても、こんなに多くの人が来てくれるとは思わなかった。自分は岐阜で育ち、藤沢で学生時代を過ごし、そのあとすぐシンガポールに渡ってしまった。だというのに、高校や大学時代の仲間をはじめ、シンガポールで出会った友人たちまで足を運んでくれた。学生時代の恩師・脇田先生には同じ展示者として再会できたし、尊敬する久野ギルさんにいたっては大仏のためにSix Strings Sonics, TheのCDをお貸しいただけた。感激しかない。

会期が終わってしみじみ思う。主催者も、来場者も、展示者も。みんな東京が好きなのだ。もちろん僕も大好きだ。大好きな街だから、離れるときは、少し寂しかった。そんな街のドレスアップに、日々のリフレッシュに、MATは咲いていたのだろう。

春はもうすぐだ。

古いノートから

今週はチャイニーズ・ニューイヤーの関係で、職場も人が少なく、ゆっくり仕事をすることができた。せっかくの機会なので、新作の準備を始めたり、クロッキー帳やEvernoteに書き留めた作業ノートを整理して過ごした。

古いノートを読み返すうち、妙に力のこもった文章を発見した。2016年の春から夏にかけての試行錯誤を、その年の秋に振り返って書いたものだ。とりとめのない文章で気恥ずかしくもあるが、面白いところもあるから転載しようと思う。

今年は春から時間ができて、これまでのプロジェクトを整理することができた。手始めに、長らく進歩のなかった「踊る箱」を見直すことにした。2013年の夏に始めた、自ら転がり回る立方体を作るプロジェクトだ。手探りで、寸暇を惜しまず取り組んだけど、どうにもうまくいかなかった。
 
失敗の理由は多々ある。創造力と技術力の欠如で、コマ撮りアニメやCGができること以上のイリュージョンが作れなかったせいもある。開発中にMITやETHからずっと高性能な立方体が登場してしまったのも外因としてある。端的に、プロジェクトに専念する時間がとれなかったのも大きい。
 
最も根の深い問題は、無機物が動くと生命感が宿って面白いかも、という気持ちでプロジェクトをやっていたことだ。こっそり「非生物生物」なんて呼んだりもしていた。幸い2014年・2015年と2年も停滞していたおかげで、ここに疑問を持つことができた。
 
そもそも人間は、詩人じゃなくたって、カーテンが風に揺れているだけでも、雨粒が窓をつたっているだけでも、そこに生命や神秘を感じることのできる生き物だ。そんな人間にとって、強いて人工物に生命感を宿らせる行為は、どういうことなのだろうか?
 
成功例からあげてみよう。Macのスリープランプは成功例だと思う。ホタルみたいに点滅するから、愛嬌がある。necomimiはどうだろう。人間がアニメ化する感じ、に近いのかもしれない。
 
もちろんバイオミメティクスや、アニマトロニクスという分野があるくらいだ。機械やマテリアルやサイエンスで生物の機能を再現することは面白いし、技術的な挑戦もあるし、擬人化すると可愛くなるし、親近感も湧いてくるのは理解出来る。
 
一方で、車やバイクは生命感がないけど、我々は愛車・愛馬と呼んで可愛がったりする。
 
本物の生命と、生命感の違いは、死だ。愛車が壊れたら、それは深い悲しみに襲われる。パソコンが壊れたら、片足を失ったかのように、生活がままならない。だけど大切な人を亡くした時に比べれば、その辛さは圧倒的に浅い。
 
リアルとリアリティの違いと同じだ。VRは何度でも同じ環境を再生できるから、現実ではない。でも、私たちの生活に二度はない。
 
今の自分は、単なる機械にも愛着を抱いてしまう人間のほうに、より強く興味がある。小説で喩えると、細胞を擬人化したパラサイト・イヴより、人間がウィルス的に行動するヒュウガ・ウィルスにこそシンパシーがもてる。ロボットなら、ASIMOよりも工場用ロボットアームの方が、自然な愛着を持つことができる。
 
こうして「ロボットと生命感」というテーマが冷めていく一方で、新たに自分のなかで「ロボット=時間を与える装置なのでは?」という想いが熱くなってきた。

そして踊る箱の解体を始め、30個弱のサーボモータを手に入れた。これを元手にボトムレス・ジョイスティックロボタイプ: もじげんとすうじげんを作った。

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それがきっかけになって、2月25日(日)まで東京は六本木ヒルズ52F展望台で開催されている、Media Ambition Tokyo 2018に、ロボタイプ: 7x7CD Prayerを出展させてもらえている。東京を代表するクリエイティブ系企業や集団があつまって、彩の豊かな展示になっています。伝え聞くところによると、平日も週末も大盛況とのこと。自分の作品も埋もれず健闘しているようです。嬉しい限りです。

会期も残すところ10日ほど。たまには午後出勤にして、朝から展示はいかがでしょうか?冬は空気も澄んで、夜景がたまらなく綺麗です。六本木はレストランも多いですし、仕事帰りの夜デートにも良いですよ。

ぜひお立ち寄りください。

mediaambitiontokyo.jp

2017年に買って良かったもの

田中さんに影響されて、僕も昨年買って良かったものをリストすることにした。

pho.hatenablog.com

 

吉永サダムのスープカップ

1bankan.com

3月に九州を旅行して、唐津焼や有田焼、伊万里焼に波佐見焼をいくつか買った。そのうち、もっとも使用頻度が高いのは紙皿風の波佐見焼だが、愛着を持って使っているのは吉永サダムのスープカップ。素朴な風合いと、たっぷりした姿が好きだ。蕎麦猪口なので仕様頻度は少ないものの、中里太亀の陶器もテクスチャーが好みで愛用している。

 

南部鉄器の鍋敷き

shop.oigen.jp

常夏のシンガポールに暮らしているのに、我が家はかなりの頻度で鍋をする。二人暮らしなので、台所で一気に煮た後、そのまま食卓に鍋を置くことも多い。なので8月に東北を旅行した際に、南部鉄器の鍋敷きを買った。以来、使ってない時も、ずっと食卓に鎮座している。それがアクセントになって、なんかいい。

 

フンドーキンの味噌

2016年の春に湯布院温泉へ行き、そこで食べた「だんご汁」がとても美味しかったので、以来我が家は大分の味噌のファンになった。フンドーキンは大分の調味料メーカーで、全国的には柚子胡椒で有名だと思う。そこの味噌を、先述の九州旅行の折に買ってみた。これが最高に美味かった。いくつか種類を試して見たけど、どれを選んでも間違いなかった。都内ならスーパーにも売っていると思う。

現在、我が家は赤味噌は愛知の八丁味噌、合わせは大分のフンドーキン、あとは旅の気まぐれや、安さにつられて買った味噌をストックしている。

 

立体型アイマス

昔はいくらでも飛行機で寝れたのに、最近はうまく眠れない。原因はいくつか考えられて、ひとつは搭乗前の飲酒。寝つきをよくするために敢えて飲んでいたのだが、かえって睡眠が深く短くなってしまい、ゆっくり寝て過ごすことができない。もうひとつは機内の照明と座席スクリーンの光だ。

そこで事前の飲酒をやめ、航空会社が配布するアイマスクを大人しく使うようにしたところ、だいぶ良く眠れるようになった。しかし自分の頭は大きく、顔の彫りも浅いため、普通のアイマスクでは眼球が圧迫されてしまう。そのため起床後は半日くらい違和感が残って不愉快だった。

そんなわけで、上記のアイマスクを買った。これの長所は、目と鼻の周りが膨らんでおり、さらにベルトの長さが調節できるため、圧迫しないで密着できるところだ。このアイマスクを装着したうえで、飛行機で寝るときは使い捨てのマスクで口と鼻を、パーカーのフードで耳をガードしている。すると熟睡できうえ、風邪ももらわない。はたからみれば怪しすぎる風貌で、着陸後は寝癖に困らされるが、機内での睡眠に不安を持っている人にはオススメしたいコンビネーションだ。

 

ミニスーファミ 

www.nintendo.co.jp

2016年にファミコン版を買い逃したので、スーファミ版は必死になって買った。ファミコンのゲームは難易度や操作感が洗練されてなくて、今から遊ぶと流石に辛いところがある。だけどスーファミは今でも十分楽しめる。25年前のゲームだというのに、これは異常だ。「がんばれゴエモン2 奇天烈将軍マッギネス」や「バトルドッヂボール」、あとは「ロマサガ2」なんかが入っていたら、個人的には完璧だった。メガドライブミニも出て欲しい。

 

三ヶ島の自転車ペダル

2016年の初秋に自転車を買い、しばらく快適に使ってきたのだが、 1年を過ぎたあたりでペダリング中に異音がするようになった。何度か自転車屋に通って、最終的にはカップ&コーンのグリスアップで治ったのだけど、問題発見の過程で三ヶ島製のペダルに変えた。決して高くないのに、吊るしの自転車についてきたペダルに比べて、格段に軽く回って感動した。自転車は回転する部品の摩擦を減らしてくことが大事なんだなと教えてくれた一品。

 

イボ取りジェル

いつ頃からか顔にイボができるようになった。自分は容貌に無頓着だから、はっきりとした時期を覚えていない。それが最近になって、髭を剃ったり、メガネをかけたりするときに邪魔だなぁと思い始め、自力でとることにした。最初は絆創膏や液体のイボコロリを使ってみたのだけど、場所が場所だから定着が悪い。そこで見つけたのが、ジェル状のイボ取りだ。これを塗布すると、毎日わずかにイボの皮がめくれていく。数ヶ月使って、小鼻のイボはかなり小さくなったし、鼻筋のイボも半分くらいになった。これで正しい位置でメガネがかけられる。

注意すべきは、この薬剤は揮発しやすいので、冷蔵庫にしまう必要がある点だ。そしてなにより、顔への使用が禁止されている点は強調しておきたい。