人に振り回されると(運動だって)消耗する

日本に帰ってから近所のスポーツクラブに通っている。昨今のスポーツクラブは実に快適だ。サウナ+水風呂もあるし、大浴場まである。今は正直、この風呂を楽しみに通っている。筋トレや水泳は、風呂を満喫するための準備運動みたいなものだ。

スポーツクラブには、ヨガやエアロビといったクラスが用意されている。人気は相当なもので、スタジオはいつも盛況だ。なら自分もと思って、入会後に何回か参加したのだが、ちっとも楽しくなかった。ヨガにいたっては、むしろ腰痛が深刻化する始末。

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楽しめない理由は、体操そのものではなく、先生のリズムにあわせて運動する必要があるからだと思う。体操の先生は、みな小柄で細く、筋肉質。一方の自分は、背が高く、手足も長く、そして太い。体にかかる負荷が違うから、同じ速度・同じ回数で動かせないし、運動そのものに違和感を覚えてしまう。

そこで、クラスで習ったヨガを、自分一人でやることにした。ストレッチルームに座り、自分の身体と対話するように、呼吸をしたり、筋を伸ばしたりしていると、確実な気持ちよさがあって、心もほぐれて、体の調子も整っていく。腰痛も消えた。セルフヨガ最高じゃん!

運動でも勉強でも、初学者のつまづきというのは、こういうところにあるんだと思う。まずは自分のリズムの確保。それさえできれば、身体にあわないことでも楽しくなるもんだ。

ヤマメとサクラマス

今朝のNHKの放送で、心に響くものががあった。それは自然番組の一節で、ヤマメとサクラマスについての映像だった。

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ヤマメの幼魚は川虫を食べて成長する。川虫は流れの強いところで獲れるので、幼魚間で餌場を巡って争いがおこる。初期に餌場を確保できた幼魚は、潤沢な食料によって、さらに成長する。餌場を確保できなかった幼魚は、うまく成長することができない。こうして幼魚間の体格差が広がる。強いヤマメは急流に耐える体を手に入れて、さらに恵まれた餌場で暮らせるようになる。弱いヤマメは流れの穏やかな川淵で、ひっそりと生きざるをえない。

だが、話はそれで終わらない。弱いヤマメは、ある日、一大決心する。体を海水仕様へ仕立て直し、川を降って海に出るのだ。こうして弱いヤマメは、母なる海の潤沢な栄養をえて、巨魚・サクラマスへと変化を遂げる。体格は川魚の比ではない。上あごは大きく飛びで、体は赤い斑紋が浮かんでいる。歴戦の勇者のような威厳を感じさせる。

悲しいのは、そのあとだ。海に出て大きく育ったサクラマスも、産卵のためには川に戻らなければならない。いくら逞しい体を得たとはいえ、遡上するのは並大抵ではない。川の流れ、大地の高低、それに加えて滝もある。こうした障害を乗り越えて、生まれ育った渓流へとたどり着く。だが受難はそこで終わらない。川に居続けたヤマメが、産卵の邪魔をしてくるのだ。相対的に小柄なヤマメのオスは、サクラマスのメスの下に潜り込み、生みたての卵に精子をかけてくる。卑劣と言わずしてなんと言おうか。

最期は、さらに辛い。海に渡ったサクラマスは、産卵によって命脈が尽きる。流れ落ちるサクラマスをよそに、ヤマメはさらに一年、川で暮らすことができるのだ。

シンガポールから日本に戻ってきた自分には、どうしてもサクラマスに同情してしまう。朝から少しセンチメンタルな気持ちになりながらも、自分も遡上の努力を続けたい。

岐阜は自転車が楽しい

10月から岐阜で生活している。岐阜市は公共交通機関が乏しいが、橋を除けば平坦なので、街中の移動は自転車でことが足りる。それを見越して、愛用の折りたたみ自転車を預け荷物で飛行機に乗せ、シンガポールから岐阜まで持ち帰ってきた。

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自転車で散策することを、ポタリングというらしい。シンガポールにいる時は、汗を噴き出さずに自転車をこぐことができなかったので、その楽しさがまったく理解できなかった。秋の岐阜を走るようになって、ようやくその気持ち良さを知ることができた。

自転車の楽しさのひとつに、調子が悪くなった部品を自分で交換できる、という点がある。僕の折りたたみ自転車は、去年の夏あたりから、漕ぐたびにコツン・コツンと音がなるようになった。どうやらBB(という部品)の調子が悪いらしい、というところまでは突き止めたのだが*1、いかんせんシンガポールは暑いし、部品も工具も輸入しないといけないので、部品を交換しようという気にもならなかった。

それが今は、なんの不自由もない。Dahon HorizeのBBは軸長114.5mm。シマノのカートリッジ式BB(UN55 軸長115mm)と工具一式をAmazonで揃えて、自分で交換することができた*2。交換後は異音もなくなり、ギア1段分くらい軽くペダルがこげるようになった。

岐阜に帰ってほどなくして、妻の分の折りたたみ自転車も買った。見た目が綺麗で、値段も手頃だったので、生活には事足りるだろうと思って買った。しかし一緒に走ってみると、妻の自転車は自分のより圧倒的に遅かった。原因はギア比で、同じ回転数でペダルを漕いでも、妻の自転車は僕の2/3しか前に進めない。

この失敗でようやく知ったのだけど、それなりに値段のする自転車は、楽に速く走るためのギアや部品が最初からついている。そして、安いけど筋がいいとされる自転車は、あとから部品の交換がしやすいように作られている。今回買った自転車は、あまり筋が良いとはいえないみたいで、妻には少し申し訳ない感じ。それでも改善策はあるみたいで、前のギアを46Tから53Tに変えて、あわせてペダルとチェーンを交換したら、お互い無理せず良い速度で走れるようになった。BBも回転が渋かったので、早いうちに自分と同じものに変えてしまっても良いのかもしれない。

自転車について調べれば調べるほど、折りたたみ自転車が道楽だということを痛感する。世の中には、折りたたみ用の専用部品なんてほとんどなく、ロードバイクやマウンテンバイクの部品を流用して、なんとなく乗れる自転車を作るしかない。これはクロスバイクやミニベロも同じだけど、より小さく複雑なだけ、折りたたみは面倒も多い。そういう筋が悪く、底が浅く、いろいろ面倒くさいところに、僕は自分が重なって見えて、妙な親近感を覚えている。

*1:BBのメンテナンスを依頼すると2週間くらいは症状が落ちついたため。

*2:ただし右ワンだけは自分で外せなかったので、近所のあさひにお願いして、わずかな作業賃で外してもらった。