実はこれも見ていなかった。トム・クルーズ映画に、いい思い出が無いからだ。
それでもなおこの映画を見たのは、マルチタッチインタフェースやデジタルサイネージ、立体映像など、ここ近年に具象化された製品やサービスが、しばしば「マイノリティ・レポート」を引き合いに出すから。彼らの熱気から察するに、きっとスターウォーズのライトセイバーのように描かれてるんだろうと思ったら、まったく違った。古い時代のSFのように、極めて残念なものとしてテクノロジーが描かれていた。確かにそれらはガジェットとしてはクールなんけど、それを使う・使わざるをえない社会状況は、あまりに哀しかった。トム・クルーズがドラッグをキメながら亡き息子の映像をみて耽溺するシーン、電子広告にレクサスを買えと迫られるシーンの寂しさったら、見てるこっちほうが死にたくなるくらい。またVRによって思い思いの体験が得られる施設のシーケンスは、スピルバーグの自虐ネタにも思えます。人々に一服の夢を与えてきたはずの映画が、いつしか人々を現実から目を背けさせるための装置になっていた、なんて実情の。VR装置をいじるハッカーに向かって「録画してんのか!」と叫ぶトムは、まるで映画監督そのものですね。
最後はトム・クルーズらしいハッピーエンド。スピルバーグ流のエンターテイメント批判と、トムの「結局は人間同士の愛でしょ」精神が融合して、じつにオタク虐めな(笑)、皮肉の利いた良い映画でした。おすすめ!