新居さんの教え

新居さん(http://twitter.com/hnii)が9月末をもってラボを離れ、新天地へと旅立たれることになった。残された僕らは、新居さんの門出を祝福しつつも、寂寞と狼狽を隠せないでいる。新居さんがものづくり環境をセットアップしてくれたから、僕らは工作に専念できたのである。新居さんがアドバイスをくれたから、僕らはプロトタイプを完成させることができたのである。平日も、週末も、新居さんはラボにいて、僕らの尻を叩き、いろんなことを教えてくれた。年齢も、性別も、国籍も問わず、みんなに平等に、実装手法を教えてくれた。まさに情熱の人だった。

そんなガチのエンジニアである新居さんが、テンジニア(展示がもてば御の字と思ってるひと)の僕に、親身に(ときに嫌味も交えつつw)教えてくれたことをシェアしたくて、今宵はキーボードを叩いている。これからも思い出すたび、少しずつ追加すると思う。

新居先生、本当に、本当にありがとうございました。

3Dプリンタはなんでも作ることができる。どんな形状でも理論上は造形できる。
しかし、本質は速く試作するための道具。ラピッドプロトタイピングのための道具なんだ。
だから使うときは、とにかく、時間に気をつけて使う。
速く出力できる形状にモデリングする。パーツを分割する。積層する向きを変える。
本当に必要な部品だけを出力する。プロトタイプを無垢のABSで作る必要なんてほとんどない。
速く強いプロトタイプが作れるように、とにかく工夫して使う。

3Dプリンタが出力するABSの太さを知ることで、どの厚みでモデリングすれば最適かが判断できる。
モデリングしやすい・計算しやすい厚みで作るのもいいけど、それを超えることはできる。

  • MEK

3Dプリンタで出力したABSはMEK(メチルエチルケトン)をたらすと強固になる。

  • ブレッドボードについて

ブレッドボードは便利。
でもブレッドボードを使った回路を、プロトタイプって言っちゃいけない。
ノイズは拾うし、乱暴に扱えないし、なにひとつメリットがない。
ちゃんと回路が動くってわかったら、すぐユニバーサル基板に移植して、強いプロトタイプを作る。
間違えたって、ハンダ除去機があるから大丈夫。
http://www.hakko.com/japan/products/hakko_808.html

  • レーザーカッターについて(1)

マニュアルに書かれた数値どおり使っちゃいけない。
工業製品はフル出力で使いつづけると壊れてしまう。
2割は低い出力で使うこと。

  • レーザーカッターについて(2)

レーザーカッターはなんでも切れるから、材質の特徴を気にしなくなる。
たとえば木目とかを無視した設計をはじめる。
手を使って刃物で切れば、すぐに分かることなのに。

  • ナットの緩みを抑える

ロックタイトを使う手もあるけど、まずはダブルナット。
お互いを締め合えば、たいていの緩みはとまる。

  • 接着剤

プロトタイプを即座に固定したいならタミヤのエポキシ接着剤がベスト。
昔は1分硬化もあったが、今は5分硬化しかない。
エポキシ接着剤は、電子回路の絶縁にも使えて便利。
アクリル同士の接着には、セメダイン・スーパーXもおすすめ。

  • LiPoバッテリーについて

LiPoは便利だけど危険で繊細。
バッテリーを使いきってしまうと、二度と使えなくなることがある。
そのためにバッテリー監視ICをかまして、リセットできるように。

原因は、ギアが壊れている・外れていることが多い。
対処法としては、ギアを組み直す、シリコングリスを洗って塗り直す、など。

  • 内部抵抗

見てくれがいいからといって、AC200V用の工業用スイッチをDC回路に使っちゃだめ。
内部抵抗が大きすぎて、反応が鈍くなってしまう。
同様に、Photo MOSリレーも内部抵抗が大きい。キャタピーくらいの用途ならPower MOS FETを使うのが吉。

輪ゴムの無限軌道のズレを防ぐために、樽状にすること。凹状でも平面でもいけない。

ダイソー3Dプリンタだと思えば、速く強いプロトタイプが作れるんだ。
最初からゼロから作らなくてもいいじゃない。使えるものを使いなさい。

追記:新居先生の発言をまとめたTogetterも良いです。 http://togetter.com/li/313836