趣味の話

「趣味は仕事です」とか「仕事が趣味です」という人がいる。そういう人は、よほど運と才能に恵まれているか、心の広い家族に支えられているか、もしくは鈍感なんだと思う。

とはいう僕も、仕事をはじめた頃は、趣味が仕事だった。仕事が楽しくて楽しくて仕方なかった。土日も職場にいって、何かプロトタイプを作っていた。でも、そんな生活は長く続かなかった。疲れがたまって体調がおかしくなったのが第一。職場の方針変更で、新しいプロトタイプを作ることが推奨されなくなり、おおっぴらに活動できなくなったのが第二。

それでも物作りは好きだから、なにか気晴らしに作ろうと思って始めたのが、プラモデルである。当時住んでいたToa Payohの団地から、南東にいったところにタミヤの専売店がある。ある週末、ふらりとそこに寄って、1/700(スケール)の軍艦と、1/48の旧軍の自動車とブルドーザーを買った。

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ガンプラで育った身には、接着剤を多用するスケールモデルは難しかった。特に軍艦は部品が細かくて、ピンセットでつまんでも弾け飛んでしまう。それでもゴールに向かって手を動かしていく感じが楽しくて、あっという間に作り終えた。塗料を買う覚悟も、塗装の仕方も知らなかったから、まったくの素組だったけど、心に響くものがあった。

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そんな満足感が契機となり、同僚で趣味人の末田さんの指導を仰ぎながら、プラモ趣味が加速度的に深まっていった。塗料はアクリル、塗装は筆塗り。安いプラモを買っては、暇な時間に作っていった。プラモを始めてめて3ヶ月後には、1/72のコルセアが作れるくらいにはなった(シールがずれてるけど)。

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それから1年ほど、気が向くままに軍艦や戦車、戦闘機を作っていった(その間、タミヤの本社を見学したりもした)。陳列できるくらい模型が増えてくると、今度はスケールを揃えたくなった。1/72の戦闘機と、1/25の戦車と、1/700の軍艦が横に並んでいると、どうしてもとぼけた感じになってしまうからだ。以来、1/48の戦車と戦闘機を中心に作っている。作り終えたプラモデルを並べると、軍事博物館の館長になったようで、なかなか嬉しい。

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プラモ熱が高まりすぎて、もっと精巧に作れるようになりたい、と思った時期もあった。模型の教科書・ノモケンや、筆塗りの神様・田中克自さんの教本を買って勉強したりもした。でも、そうした模型作りは自分の性分にはあわなかった。作る楽しさは減るし、仕事が忙しいと模型を作るのも億劫になった。

 

そんな時に、もっと脱力して取り組めばいいのだ、と悟りをえた。上野の博物館や、ドイツまで行って大戦中の戦車や戦闘機を見た結果、実際の機体は模型ほど精巧じゃないと気づいたからだ。塗装はムラがあるし、板金はベコベコしている。なので必要以上に気張らないことにした。見えないところは塗らない。戦車は組み上げたあとに、一気に缶スプレーで塗る。筆ムラを肯定する。オプショナルパーツは、安ければ買う。墨入れはしないでウォッシングで済ます・・・などなど。すると制作スピードがアップして、作る快感が戻ってきた。悪く言えば手抜きかもしれないけど、自分が楽しむための趣味だから、これでいいのだ。まぁ僕は、一事が万事、そうなのかもしれないけれど。

最近は夕食の後、妻が文字をなぞってる横でプラモを作っている。あちらの趣味は精巧そのもので、今度は六本木の美術館で展示されるそうだ。ちょうど今週末から始まるそうなので、もしよかったら見に行ってみてください。

www.2121designsight.jp

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