変な夢を見た。たぶん1年後の今頃の季節の話だと思う。

大学院を修了した僕は、なぜか高校に通っていた。でも本当は4月からセメント工場に就職するはずだった。それなのに僕は高校に戻って勉強を再開していた。

入社式からひと月が経ち、遂に僕はセメント工場へ出向かざるをえなくなった。雨の中、友人らしい2人に付き添われて出社し、工場の役員室に行く。そこでは僕と同期になったであろう女性社員3名が、新人研修での成績を表彰されていた。襟に百合型のピンズをつけてもらっていた。その彼女らと入れ違いで、僕は役員室に入った。

役員はみな、呆れたような目で僕を見ている。はるか昔に職員室に呼び出されたときと同じ感触に包まれる。しばらくして僕の上司(となるべきだった人)に、無断欠勤の理由を問われる。

僕はこたえた。
「大学院を出て、更に世の中への謎が深まったので、高校に入って考えなおそうと思った」

役員たちは失笑した。ボンタンを履いた現場監督のような男は、ほんもののアホを見つけた、とでも思ったのだろう。厭らしい笑みを浮かべて、彼はこう言った。

「じゃあ、なんでここに就職したんだよ」

ボンタンの正論に役員は皆、頷いた。僕は真面目に答えた。

「セメント工場で働くことで人の役に立てると思った。第一、僕はセメントが好きだ。初めてモルタルを打ったのは中学の頃だ。大学の頃はバイトで土方をしたりもした。そういう労働に関わっている、個性的な人々も好きだ。仕事が終わって、一緒にビールでも飲みに行ったら幸せだと思った」

言い終わると、役員らは無言で了解をとりあっていた。合意がとれると、上司(となるべきだった人)は僕に解雇の旨を告げた。

まぁ当然だよな。そう思いながら僕は役員室のドアへと向かう。
そのとき、一人が僕を呼び止めた。

「どうせ辞めて帰るなら、私の部署を覗いてみない?」

三十代後半くらいなのかな。女性の声だった。僕は振り返って返答した。

「はい!」


そこで夢から覚めた。そして僕は28歳になった。