自分が中学生になる少し前、親が家を建てた。だけど、敷地には家しかなかった。黄土色の砂利の上に、ニョッキリ新築が生えていた。
その家に引っ越したあと、およそ1年くらいかけて、家族で庭と駐車場を作ることになった。農家の子が田植えを手伝ったり、酒屋の子が店番をしたりするのと同じで、我が家は外構をやるんだ(それが家計を助けることになるんだ)と理解した。
方眼紙で製図する。ツルハシで瓦礫を掘り起こし、スコップでかき集めて、ネコで運ぶ。モルタルを捏ねて、コンクリートブロックを積む。レンガを並べて、玄関までのアプローチを作る。庭木を植え、芝を張る。休日だけでなく、学校が早く終わった日もやっていたと思う。もう30年前のことだから記憶も怪しいが、たしか定期テスト前でも駆り出されていたような。
もっぱら節約のためだと思うが、他にもいろんなことをやった。たとえば、今みたいな季節の変わり目は、車のタイヤ交換を手伝った。あまり気乗りのしない作業だったので、タイヤレンチを適当な角度でひっかけて踏みつけたら、レンチの先がスニーカーの底を突き抜けて、足の裏を少し縫う羽目になったこともある。
そうやって育ってきたから、働いてる大学の学生が、組み立て家具もろくに作れない、ペンキもまともに塗れないのを見るにつけ、マジかよと頭を抱えてしまう。でも、まぁ、それが普通なのかもしれないと、最近は納得するようにしている。