Anycubic Photonを使いはじめて1年がたった。この間にPhotonの値段は半額以下(6万円→3万円)になり、Photon-Sという後継機種も登場した。レジンの販路も増え、競合他機種も出てきた。2019年は激変の時代だった。自分もユーザとしてノウハウがたまった。すると前回の記事が古びてみえるようになった。そこで情報のアップデートをはかるべく、今日は記事を書いている。大きな変化としては水洗いレジンを使うようになった点だ。時間がない人は最後のリストを見てください。
トピック
臭気との格闘
SLA式3Dプリンタは、レジンとIPA(イソプロピルアルコール)が健康被害をおこす。臭気の吸引は有機溶剤用の防毒マスクで、皮膚接触はゴム手袋で防ぐことができるが、気密が高く通風の悪い日本の家屋では、室内に充満する臭気を除去することが難しい。
上図はPhotonを側面から模式化したもので、装置内の空気の流れを示している。造形部のバットから立ち上がるレジンの臭気は、排気ファンによって制御部へと導かれ、そのまま背面の通気口から外部へ発散されてしまう。排気ファンには一応のエアフィルターがついているが、まったく役に立たない。よって何らかの工夫が必要だ。
ガスマスクで空気清浄機を作る
まず空気清浄機で臭気を除去するという方法が思いつく。先人*1 *2にならい、防毒マスクの吸収缶で装置を自作してみた。これが抜群だった。造形中もレジン臭が部屋に広がらず、防毒マスクなしに作業部屋にいられた。
だが寿命があまりに短い。フィルターの性能にもよるのだろうが、Photonの純正レジンと3Mの吸収缶の組み合わせでは、20時間たたずして臭気が漏れ始めた。また造形物をIPAでゆすぐ際の臭気に対しては無力だった。
窓用換気扇を設置する
室内に充満する臭気を追い出すには、強制的に排気するしかない。友人のアドバイスをうけて窓用換気扇を導入したところ、IPAの臭気に対しても効果があった。難点は「造形中に窓を空ける→部屋が冷える→レジンも冷える→造形品質が下がる」こと。懸念事項は臭気の比重。レジンの臭気が空気より重い場合、換気扇で排気できない。そうなったらドラフトチャンバーを導入するしかない。
結論「低アレルゲン水洗いレジン」
ここまで対症療法的に臭気と戦ってきたが、「レジンが臭いこと」「レジンの洗浄にIPAが必要なこと」こそが問題の根本だ。よって「匂いが穏やかでIPAが不要なレジンを使う」のがベストだ。
最近、仕事の都合でNSSの低アレルゲン水洗いレジンを使い始めた。これが良かった。コストは2倍するけど、臭気は弱く、触れても肌がかぶれないし、圧倒的に安全でヘルシーだと思う。
みんなも低アレルゲン水洗いレジンを使おう。ユーザーが増え、競合するレジンが出てくれば、いずれ値段も下がると思う。みんなも低アレルゲン水洗いレジンを使おう。
Anycubic Photon 導入時に必要なもの
低アレルゲン水洗いレジンの場合
・Photon 本体 (Amazon)
・水洗いレジン (NSS)
NSS以外だとSK本舗の水洗いレジンも臭みが少なくて使いやすい。
・出力後の造形物を水洗いするための道具 (100円ショップなど)
ステンレス製のザルとボウルを使って造形物を流水で洗う。細かいところは使い古しの歯ブラシを使ってゆすぐと良い。他にステンレス製のバットがいくつかあると作業に良い。
・カーボンはがしヘラ (Amazon)
造形物をプラットフォームから剥がすのに使う。丈夫でおすすめ。
・ラバーヘラ (Amazon)
造形後にバットに残ったレジンを回収するために使う。ゴム製なのでフィルムを傷つけなくて安心。
・ストレーナー (Amazon)
バットに残ったレジンを再利用する際、レジン屑を除去するために使う。使い捨て。
・キムワイプ (Amazon)
レジンの拭き取りに使う。キッチンペーパーでも良い。
プラットフォームやFEPフィルムの拭き取り仕上げにはIPAがあったほうがいい。キムワイプを湿らせる程度でいいので、大量にはいらない。100円ショップで売ってるネイルクリーナーボトルに入れておくと便利で安全。
・窓用換気扇 (Amazon)
東芝の窓用換気扇は排気用(VFW)と吸排気用(VRW)がある。作業部屋には冷房がないので、吸排気用を買った。補助的に使っている。
通常レジンの場合
・こちらの記事を参照してください。